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靴磨きジョセフ 4

 キベラにはその前に一度行ったことがあった。
ツアーガイドをやっている友人が住む家を訪ね
てみたのだ。スラム地区として知られていると
はいってもバラックばかりが犇めいているわけ
ではない。市の中心街からのバスの終点になっ
ている丘の上の広場周辺にはコンクリート建て
のアパートもあるし公営住宅もある。丘の麓に
ナイロビダムと呼ばれる大きな貯水池があって、
そこへと続く幾つかの谷に不法建築物が拡がっ
ている、まさにその増殖のさ中だった。
 友人が暮らしていたのは市営住宅で、スレー
ト葺きの平屋が4軒づつ連なる長屋だ。日本式
に言えば6畳二間というところか。居間と寝室
に小さなキッチンとトイレ兼シャワー室という
造りの質素なもので、共稼ぎの若い夫婦が明る
い未来を信じて薄給を遣り繰りしながらつまし
く暮らしていた。
 靴磨きジョセフの暮らすキアンダ地区はその
丘の頂点からそれ程離れてはいなかった。バス
の通る一本の舗装道路を外れた急な斜面の一画
で、地面に突き立てた棒杭の柱に荒く削っただ
けの板を打ち付けて造った箱のようなバラック
が取り付いていた。
 所番地などありはしない。そこらの人に「ス
タンダード銀行の前で靴磨きをやってるキアン
ブ出身のジョセフの家はどこだか知らないか?」
と訊いて回るのだ。今考えると我ながら大胆な
行動だった。犯罪の温床と言われるスラムに無
防備にも一人でノコノコ出かけて行くなど、今
のキベラでは出来ることではない。

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