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震災と文明

 久しぶりに的を得た骨のある論考を目にすることがで

きた。「震災と文明」と題する新聞のシリーズ企画だ。

4人の識者に、東日本大震災の被害と対応から見えてく

る事を語ってもらうというインタビュー記事が71

から4日まで掲載されていた。

4人の識者は社会学者の大澤真幸、人類学者の中沢新一、

民族学者の赤坂憲雄と哲学者の鷲田清一だ。

  残念ながら赤坂には新しい知見も何もなかったが、

3人はそれぞれ独自の考えを展開していた。

 とりわけ目を開かれたのは大澤と中沢だった。

大澤は今最もまっとうな考えを持った識者の一人で、

その知識と言説は示唆に富む。「ふしぎなキリスト教」

(橋爪大三郎との共著、講談社現代新書)もまた一読に

値する。

  この記事では、原発というものが如何に自然に反する

ものであり、人知が作りだしたデーモンであるかを述べ、

それを産みだしたのが資本主義であると説く。

  それはまさに、私がモヤモヤと感じていたことをはっ

きりと言葉にしてくれたものだった。原発のどこが一体

「クリーン・エネルギー」なのか?私には最初から納得

できなかったし、経済効率(しかし実際には全く経済的

ではない)神話とアメリカ主導の資本増殖戦略によって

推し進められたのだということははっきりしているのだ。

 そのうえで大澤はこれからの私たちに求められるもの

として、未来の他者(数十年、数百年、数千年後の末裔

たち)を念頭に置いた社会の可能性を問う。

  中沢は鉄腕アトムが胸に原子炉を持ち核エネルギーに

よって動くロボットであったことを思い出し、現代の原

発が核分裂の熱エネルギーだけを利用して湯を沸かすと

いう、ローテクの最たるものと結合された「トロイの木

馬」のようなものだと指摘する。

 そしてそうした技術利用の裏にあるのが「一神教」

であり、「破壊」力を持つ「過激」な神の思想であると

説く。(そういえば大澤は「ふしぎなキリスト教」で、

資本主義を助長させたキリスト教の思想について述べて

いるが、非常に説得力があった。)

  そして古代ギリシャが、インドやエジプトや日本の民

が信奉してきた八百万の神の世界には一神教の神が持つ

危険さを包み込むインターフェイスがあったという。

  中沢は、これからの日本がとるべき道は「地域主義」

を深めることであり、昔の日本人の生き方を再創造する

ことだと括り、年内にエネルギーと文明を考える研究所

を開き、日本文明の再生を目指す「党」を立ち上げるの

だと括っている。

 果たして「党」の活動がインターフェイスとなり得る

のか、どのような地域主義を如何に展開するのか興味が

ある。しかし私が一番気にいったのは最後に言いきった

「政治は嫌でしたが斜に構えてはいられません。」とい

う言葉だ。

 そうなのだ、いかに良い理念があり民衆が立ちあがっ

ても政治が悪ければ何も動かないし、反体制運動や地下

活動となってしまっては違うものになる。

 私には911と今回の大震災によって突きつけられた

ものは同じだと感じている。それは平たく言えば「文明

の在りかた」「文明の活かしかた」だ。

 今は、浅薄な大臣の言動にかき回されたり国会で馬鹿

な時間の浪費をしている時ではない。今日私たちが何を

するかによって、1000年後どころではない数年後の他者

(というか自分自身)の生活が違ったものになる、そん

な転換点にいるのだ。

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