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2010年11月

絵筆を持つ人たち

 秋の日和の良い昼下がり、日本新聞博物館が入っている横浜
情報文化センタービルを出て、私はちょっと驚いた。
歩道の端に何人もの人が並んでいたからだ。立っている人もい
れば植え込みの柵に腰掛けている人、持参したらしい小さな腰
掛けに座っている人もいる。ほとんどの人が同じ方向を見つめ、
手にした絵筆を動かしながらイーゼルに向かっていた。
Yokohama_st 日本大通りの並木は黄葉が照り映え、通りに面した歴史を感じ
させる建物を取り込むと、なるほど絵にし易い構図ではある。
それにしても何だあの人並は。
そういえば都内にも同じような場所があったことを思い出した。
JR中央線お茶の水駅、聖橋からニコライ堂へ向かう道にも同じ
ように絵筆を持つ人たちの姿が群れ成す時季がある。
彼らは総じて60歳代以上の高齢層で、リタイア後の余暇を趣味
に過ごすだけに費やすことのできる人たちのようだ。
 写生、陶芸、俳句、絵手紙、山歩き…それらは高年層が時間
を過ごす5大趣味だと言えるだろう。
なぜそれらの趣味に人気があるのか? 考えてみる。
それぞれに欠かせない要素を思い浮かべてみて、キーワードは
「季節」ではないかと思い至った。
社会的な生産活動から外れ、一生の冬の時季に足を踏み込んで
みると、人の思いは良き過去の記憶と、その日その日の出来事
の間を行きつ戻りつするだけで、未来へ向ける視野はどんどん
狭くなってしまうものだ。
ああ、いかん!自分も時々、過去の事を思っていたりする。
近い将来、あの年代に達するとは言え、あの絵筆を持つ人たち
には近付きたくないものだ。

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3331 Arts Chiyodaと秋葉原

 日比野克彦の個展“ひとはなぜ絵を描くのか?”を観に3331
Arts Chiyodaという所に行ってみた。
3331arts_chiyoda

そんな場所があるなんて知らなかったが、廃校になった中学校
を改装してアートスペースとして運営されている。ギャラリー
のほかにアトリエやユニークなアートプロジェクトの事務局が
あって、なかなか面白い試みのようだ。区の資産を民間が運営
するという方法だろうが、あまり人集めできていないように見
受けられ、資金繰りの問題で閉館・売却の果てに取り壊わされ
てビルになると言う運命だけは辿って欲しく無い。
 で、“ひとはなぜ絵を描くのか?”。この問いは、ゴーギャン
の、あの”我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はど
こへ行くのか”に繋がる芸術の大テーマではあるが、それは人の
生きるテーマでもあるわけで、この展覧は、なかなか分り易い
展観になっている。
日比野はパリ経由でカメルーンへ行った。パリで30枚の画用紙
を仕入れてホテルに籠り、部屋の中で目にするものを毎日描い
てゆくが、その作業の中で自分が何を見、思い、描いているの
かを思索する。だんだんと描くものが無くなって、20枚描いた
ところで、白紙の画用紙10枚を持ってカメルーン行きの飛行機
に乗る。カメルーンでも描く機会を持とうと思ってはいたが、
結局その10枚は白紙のまま日本へ帰国した。
 絵画でも文章でも同様に、描く対象と内容、思い、きっかけ
や環境、制作過程での作者の内面の変化変容といった要素は、
作品の成立に深くかかわることは容易に理解出来ると思う。
日比野のアートはポップ風な作為溢れるコンセプチュアル・
アートで、今回の展観はそのことを強く意識させる。
Sidewalk_akiba_2

 とてもスッキリした気分で最寄りのJR秋葉原駅に向かった。
ピンクのダウンジャケットを羽織ったメイドスタイルの女の子
たちが呼び込みをしている。ラブラドール犬を連れたオヤジが
ビルの谷間を散歩している。駅前広場から、ホームで待つ乗客
たちがよく見える。
”ひとは何故…” ”我々は…”あの人たちは、そのあとに何
を問い かけているのか? …なんてことを感じながら帰路に
ついた。

St_2

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東京の西、東

Jpg_2



Photo_3

 最近、或る用事があって葛飾区に出向いている。
千葉県と接する東京の東の端だから、私が暮らす西の端、
神奈川県と接する町田から行くと東京を横断することになる。
これは日本だけじゃなく世界の町や都市に共通して見られる
こどだが、概して町の西側はベッドタウンや住宅を中心とす
る街区が形作られ、東側には工場などの製造、産業のための
街区を中心とする町が形作られる傾向がある。
葛飾区は荒川と江戸川に挟まれた土地で、戦前までは町工場
が多かったという。オモチャのタカラトミーの本社はここに
あるし、以前はブリキやセルロイドの玩具製造、ネジとかの
金属加工業などが盛んだった。…というような知識を仕入れ
て行ってみた。
 UNDP(国連開発計画)の最新の報告書によると、国民生
活の豊かさを示す指数(新聞ではこのように書いてあるが、
多分「人間開発指数」のこと)で、日本は世界11位なのだそ
うだ。何を持って「豊か」とするのか議論の必要なところだ
が、「開発」の逆を言えば「未開発」ということだから、お
およその察しはつく。
しかし私の実感するところでは、非常に大雑把に言って、今
の日本はアフリカのエチオピアよりも豊かではない。
中国が89位でインドが119位だというから、UNDPの基準で
エチオピアは150位あたりのはずだ。
 で、東京の東、葛飾のことに話を戻すと、人間開発指数的
にはどうだか知らないが、私には暮らしの時間に悠然とした
ところがあるようで、「豊か」に感じる。
Photo_2 私の暮らす町田は、駅周辺にいくつもの百貨店があったりす
るし、ギャルファッションで名高い109なんていうものまで
ある。飲食街にはキャバクラ通りもあって日が暮れると客引
きが跋扈するし、今はどうか知らないが、中国人の街娼が通
行人の袖を引く一角もあった。JRと小田急の駅間を忙しげに
行き交う人の波もある。その町田を私は「豊か」だとは感じ
ない。
そういえば、1970年代、ここは中学高校の学級崩壊で名を
馳せたという。

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