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物乞い再来

 しばらく見なかった物乞いが現れた。
初めて見た日からおよそ一週間経った夕方。同じ場所だった。
携帯で写真を撮ってから近くを通ってみると、足元のプラス
チックボウルに十円玉ばかりが10枚ほど入っていた。
施しをした人がいるのか!呼び水として入れておくには多過ぎ
るし、それなら100円玉も混ぜておいたほうがいいだろう。
どんな人がどんな風に施しをするのか?
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 一旦通り過ぎて引き返し、遠目に様子を窺うことにした。
通行人のほとんどは敢えて近くを行き過ぎる気配も無い。ひょ
っとしたら、そうした反応を含めた社会環境パフォーマンスな
のかも知れない。あるいはどこかからモニターしていて、何ら
かの統計でも取っているのか?なんて考え始めた頃、男は突然
コートを取って顔を出し、ボウルの小銭をポケットに入れた。
短髪に白いものが混じっている。あの頭は1〜2週間前に散髪し
たに違いない。こざっぱりしていて、私の知るホームレスの雰
囲気は感じられない。しかしパフォーマーでもなさそうだ。
これといった特徴の無い中肉中背の中年男で、黒のTシャツに
ブルージーンズ。着古したものとはいえ、汚れてはいない。
頭から被っていた薄汚れたコートは物乞い用の衣装なのか?
座っていた時にはコートの陰に隠されていたが、大きなショル
ダーバッグを持っていて、ボウルとコートを突っ込むと、辺り
を見回してさっと立ち上がった。
そして重そうなバッグを肩に掛けると、しっかりとした足取り
で歩き始めた。恥じらう様子もなく、大道芸人が芸を終えて店
じまいをする感じだ。営業終了ということか?
 少し間を置いて後を追った。向かった先はビルの谷間の遊歩
道に置かれたベンチで、荷物を置くと座って涼をとっている。
あの場所に何時間座っていたのだろうか?昼食時に通った時は
見なかったから、それほど長時間ではないだろう。そうして彼
が物乞いで得るお金は生活の足しになる程は無い。多分それは
始めから分かっているに違いない。
何故彼は物乞いをするのか?それは本人に聞いてみないことに
は分からないが、今の日本で物乞いが成立するのか…という命
題を投げかけていることだけは確かだ。
 遊歩道の向こうから太鼓のリズムが聞こえていた。若い男が
一人、アフリカの太鼓、ジェンベの練習をしている。まだ拙い
音から、初心者の域を出ない事がよくわかる。しかし、もしあ
の若者が足下に空き缶でも置いておけば、小銭くらい投げ入れ
る通行人がいるかもしれないとは想像出来る。
物乞いに小銭を与えた人は誰か?どんな思いだったのか?
…それはなかなか想像し難い。
一息ついた物乞いは、重そうなバッグを肩にかけるとビルの
谷間に姿を消した。

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