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ジュンパ・ラヒリ、世界文学の方向性

 ピューリツア賞作家ジュンパ・ラヒリの最新短編集がいい。
邦訳は第一短編集「停電の夜に」長編で映画化もされて話題に
なった「その名にちなんで」、次いで出たのが「見知らぬ場所」
だ。カルカッタ出身のベンガル人を両親にもつロンドン生まれの
ラヒリはアメリカ東部で育ち、結婚して今もニューヨークに暮ら
している。その作品はアメリカに暮らすベンガル人移民第一世代
から第ニ世代をとりまく世界を描いていて、出自、民族性、家族
というテーマで一貫している。
ラヒリのテーマは私が求めるテーマと重なる部分が多く、前にこ
のブログで紹介したナイジェリア出身のアディーチェとともに注
目している。二人がいずれも女性で、アメリカに暮らしていると
いうことは偶然ではないような気がする。それは、元々が移民に
よって形成されたとはいえ、当初とはかなり異なる人種構成と社
会背景を持つに至った現在のアメリカあってこそ生まれた文学だ
ということが一点。それぞれの出身文化がアジアのインド、ベン
ガルとアフリカのナイジェリア、イボであるといことが二点目。
さらにこれから子孫を孕み育てる母性を持つ存在であること。
つまりDNAを伝播してゆくメディアだということが三点目だ。
 戦争の世紀と呼ばれる20世紀から、今この21世紀は壊滅か存
続かの境目に来ているのだと思う。もしここに何かの希望を探す
とするなら、そのヒントは彼女達の描く世界のなかにあるような
気がしている。21世紀の世界文学が目指すべき方向性のカギが
あるように感じている。
 戦争、民族性、家族、移民というテーマに関連して、私の拙著
「マッサラーマ・ソマリア」というノンフィクションが、講談社
のノンフィクション誌「G2」のweb版内限定掲載のG3という
コーナーで連載されることになりました。掲載開始は11月上旬の
予定です。はっきりしたら改めてお知らせします。

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