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『「生きづらさ」について』-1-

 80年代の日本に何が起こったのか?その一端が探れそうな本が
目についたので読んでみた。雨宮処凛と萱野稔人の対談『「生き
づらさ」について』だ。副題は〜貧困、アイデンティティ、ナシ
ョナリズム〜となっている。元右翼系パンクロッカーで今やプレ
カリアート問題に取り組むジャーナリストと気鋭の哲学者が、労
動や格差、貧困の問題についての体験的な話を展開して実に分か
りやすい。折も折、新聞には「非正規15万7806人失職」の見出
し(東京新聞2/27夕刊)が1面トップを飾っていた。 
随分具体的な端数が出ているものだが、そのような数字は政府の
バイアスが掛かったご都合的な統計である事は誰もが判る事だ。
 アフリカから帰国した1995年以来、私の肩書きはフリーラン
スのテレビ演出家だった。実質的には潜在的失業者で、一回あた
りの労賃は比較的高いが連続性の少ない、いわば日雇い労働に近
いもので、言い換えるならばマスコミ系専門フリーターだ。
一家5人の生計を維持する安定した収入が維持できていたわけで
はないので、マスコミの仕事が無い時に色々なアルバイトをした
ものだ。それは警備会社の交通誘導員だったり、大型量販店の防
犯係(主に万引きやクレーム対応)。大手自動車メーカーの部品
倉庫の発送係、焼き鳥屋の仕込み、ラブホテルの客室清掃員、ビ
ジネスホテルの夜間専門フロントマン…というような仕事だった。
どれもが所謂派遣を含めた非正規雇用だ。最近の日本には、中年
のオヤジに正規雇用の道は開かれてなどいない。
勿論正規雇用を求めては折に触れてハローワークに通った。何10
回となく履歴書も送ったが、1回も面接に呼ばれた事はない。
政府が年齢制限を規制しているので、表向きは求人に年齢の枠は
無い事になっている。しかし実情はそうなっていない。事ごとく
突き返される履歴書に業を煮やして、一体拒否の理由が何かを把
握しているのかと、ハローワーク職員を問いつめた事もある。
でも奴らはそんなことは知らないし追求しようともしていない。
新聞に発表される、実体を全く反映していない有効求人倍率など
の統計を出すだけだ。
 とにかく私もそのように、プレカリアートの一員として帰国以
来「生きづらさ」の中で生きてきたのだなあと、この本を読みな
がら実感したのだ。

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