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リサイクル 2

リサイクル 2

 人間という奴は、目先の生活のためには後先を考えずにとて
も愚かなことをやってのけるものだ。禿げ山に雨が降ると、山
崩れや洪水を引き起こして人や生物を飲み込み、汚水溜まりを
出現させ疫病を発生させる。自然界は一度バランスが壊れると
積み木が崩れるように破壊を連鎖させる。
ケニアでも以前はわずかな野生動物しか居なかった森やサバン
ナに人が入って畑を作り集落が出来たために、土地が急速に荒
れ始めて砂漠化に向かった場所がいくつもある。そのスピード
の何と早いことか。私が過ごした10数年の間にも、そのよう
にしてまるで違った風景に変わってしまった場所は多い。
 ケニアの首都ナイロビの国際空港は街の中心から車で僅か
20分程だった。初めて行った頃は、途中の道路ではよくキリ
ンやシマウマの群れに道を譲ったものだ。それが今では道路の
左右は工場となり集合住宅街が出来て、あののどかな出来事は
まさに思い出でしかない。去年久しぶりに訪ねたときは、幹線
道路のモンバサロードは一日中渋滞が続き、ひどいときは空港
から町まで1時間ほども掛かってしまう。
雨季の後にはウシカモシカの大群で埋め尽くされたナイロビ・
ナショナルパークも今では四周を柵に囲まれて動物の移動が
困難になり、かつてのような動物相は見られない。
 工業化や機械化が浸透しているいないにかかわらず人の住む
ところにはどこでも、そんな現象が形を変えて存在する。
どうしてあんな所まで人が暮らさなければならないのかと思え
るほどの人里離れた山々。その頂の痩せ衰えた土地までが細々
と耕されたエチオピアの辺境。枯れ木一本残らないまでも刈り
尽くされ、赤肌をさらして放置され浸食に任されたマダガスカ
ル高地の山。そこに暮らす人々は決して楽な一生を送るのでは
ない。
機械を使う農業など夢にも思わず、昔ながらに木の棒の先に付
いた鋤一本を使って耕作を続け、水を汲むには山の下の小川か
らバケツを頭に乗せて何度も往復しなければならない。それで
も現金なくしては生きてゆけず、子供を育て教育することも出
来ず、何も悪いことをしていないのに環境破壊の片棒を担がさ
れている。アフリカの上空を飛ぶとそのような光景が目を惹く
ばかりで、人間というものは地球を蝕む寄生虫だなあと実感せ
ずにはいられない。 
 荒廃して行く自然と社会。その元凶は人間そのものの生と欲
望が産み出したというわけだ。1時間歩くよりは車に乗れば楽
ができるとか、薪で手間をかけて火をおこすよりは電気やガス
のスイッチひとつで火が点くとか、電子レンジでチンすればあ
っという間に食べ物が用意できるとか、そんな楽な方向へとば
かり向かおうとする人間の気持ちは魔物だ。
そして一度知った「文化生活」に慣れた者は、もう元の生活は
耐え難いと感じるようになり決して引き返そうとはしない。
 今の日本では気持ちに占める欲望の比重が大きくなっていて
それを満たすための金儲けが終夜営業を促し、深夜族を助長
し、さらに犯罪の増加につながり、それが回り回って経済を混
乱に導いている。そしてこうしたことに方向性を持たせるべき
政治家の不在が事態をさらに困難にさせている。
 この悪弊の連鎖がリサイクル情況を呈している。
 人の心の荒廃は積極的な未来志向をくじけさせ、思考能力を
低下させ、威勢ばかりよくて内容のない言葉を操るリーダーを
推し抱かせてしまった。資本主義経済の存続のためには弱者
が淘汰されることも辞さず、冷血にも負け組の首を刎ねて生き
残ることを良しとして憚らない鉄仮面。そんな人物と心中でも
しようというのか、日本人。
 私はアフリカで、人間の生活が変わっていく様子、社会が変
わり人間性が変わって悪循環のサイクルが回り始めてゆく場面
を見てきている。そして今ここ日本で、そのなれの果ての社会
に直面している。

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コメント

たまたまココログのリストページから入り、全記事を拝読いたしました。

おっしゃることには同感です。
わたしも、せめてブログででも声を上げねば、と最近は思い直しております。

ケニヤには、10年以上前に、しかも観光としてちょっとだけいっただけです。ほんのすこしだけ、ナイロビの町歩きもできましたが。

アンボセリへ、行って、泊まって、帰って、もしましたが、あの道路とか、アンボセリ自体も変わったのでしょうかね?

今後も記事を楽しみにしております。

投稿: ほよっ | 2008年12月21日 (日) 17時02分

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